本県の内水面漁業は漁業生産のみならず、県民に安らぎと潤いをもたらす遊漁をはじめとする健全なレクリエーションの場として、多面的に利用されている。しかしながら、内水面を取り巻く環境は、相次いで施行される河川工事や産業排水の流入等による漁場の荒廃、カワウやブラックバス等外来魚による漁業被害、各種利水施設の過剰な取水による流量の著しい減少、漁業関係者の高齢化、組合員や遊漁者の減少など、依然として厳しい状況下に置かれている。
このような中、令和2年3月に県が策定した『新潟県内水面水産振興計画』においては、「内水面水産資源の回復」、「内水面における漁場環境の再生」、「内水面漁業の健全な発展」を主要な柱に据えて、県内の内水面漁業の振興を図ることを目的に、様々な課題に対応した各種施策を総合的に推進するとされたところであり、令和6年度事業の実施に当たっては、これらの施策推進の方向性に沿って、県や関係団体との連携・協調を図りながら取り組んでいく。
1 指 導 事 業
(1) 教育情報事業
会員の知識・資質の向上を図るため、各種研修会、講習会を開催する。
また、本会や会員の取組等を広報するため、年1回、機関誌『新潟県内水面だより』を発行するとともに、
ホームページを適宜更新し新しい情報提供に努める。
(2) 漁場環境保全事業
① 河川懇談会の開催
国土交通省及び新潟県との河川懇談会を開催し、河川行政に対する内水面漁業者の理解と、内水面漁業に対する行政機関の理解を相互に深めるとともに、魚道の整備、維持流量の確保、多自然川づくりの推進等、河川・漁場環境の改善を図る。
② その他の漁場環境保全
ダム、河川工作物の設置や工事による被害、汚濁水の流入による漁場環境の悪化を未然に防止するため、関係機関と協議して漁場環境の保全に努める。
(3) 生態系の保全に係る実践活動事業
河川利用者や地域住民の内水面生態系の保全・復元についての理解と協力を促進するため、漁協組合員を対象とした研修会等の啓発普及活動を実施する。
(4) 遊漁対策事業
① 渓流漁場のあり方懇談会
漁協の監視員・組合員、遊漁者、民間企業を参集し行政と内水面水産試験場の指導のもと、県内共通遊漁承認証のオンライン販売に伴う各種データを活用して魅力ある渓流漁場のあり方を考える懇談会を開催する。
② 遊漁者監視指導事業
渓流釣りのマナー向上と密漁防止を目的に、現場において又は端末画像を活用して監視・指導を実施する。
2 淡水魚増殖事業
河川・湖沼における水産資源の維持増大を図るため、県の助成を受け、淡水魚増殖事業を実施する。
(1) 淡水魚放流事業
種苗生産漁協、県内外の種苗生産業者から健苗を入手し、下記の数量を県内河川湖沼に放流する。
魚 種 |
数 量 |
魚 種 |
数 量 |
アユ |
14,260kg |
イワナ |
355,827尾 |
コイ |
1,375kg |
ヤマメ |
379,104尾 |
フナ |
1,335kg |
カジカ |
102,980尾 |
ニジマス |
2,250kg |
サクラマス |
1,058,970尾 |
ウナギ |
145kg |
モクズガニ |
300kg |
(2) 稚アユ採捕放流事業
今年度は河川の状況、採捕従事者の高齢化などを考慮して事業を休止する。
採捕従事者の高齢化と種苗生産供給施設の老朽化が課題となっているため、事業のあり
方を検討する必要がある。
(3) アユ中間育成事業
(公社)新潟県水産振興協会から1,250千尾の元種苗を購入、8漁協で10,250kgを生産し放流する。
組 合 名 |
数 量 |
組 合 名 |
数 量 |
三面川鮭産漁協 |
200,000尾 |
五十嵐川漁協 |
90,000尾 |
荒川漁協 |
100,000尾 |
魚沼漁協 |
530,000尾 |
阿賀野川漁協 |
70,000尾 |
糸魚川内水面漁協 |
210,000尾 |
阿賀野川漁連 |
20,000尾 |
|
|
加茂川漁協 |
30,000尾 |
合 計 |
1,250,000尾 |
(4) 外来魚等被害緊急対策事業及び広域連携カワウ・外来魚被害管理対策事業
内水面における水産資源の保護、回復及び内水面漁業の秩序を保持するため、県及び全国内水面漁連の助成を受け、長岡技術科学大学及び新潟県内水面水産試験場の指導を得て、オオクチバス等外来害魚駆除及びカワウ駆除・被害状況等調査を実施する。
① 外来魚駆除
主な駆除予定水域と関係漁協
・福島潟、新井郷川、新発田川放水路 福島潟・新井郷川漁協
・阿賀野川 阿賀野川漁協
・加茂川、下条川(下条ダム湖含む) 加茂川漁協
・刈谷田川、塩谷川 刈谷田川漁協
・信濃川中流(五辺の池含む) 魚沼漁協
・奥只見ダム湖 魚沼漁協(全内漁連補助)
② カワウ駆除及び被害状況調査等
カワウの被害防止対策や個体群管理などを目的にした「第二期新潟県カワウ管理計画」が令和5年3月に策定された。計画に基づく管理を行うため、被害状況等調査、有害鳥獣繁殖抑制・駆除、被害防止対策(全内漁連補助)を、以下のとおり実施する。
なお、カワウ被害算定の基礎となる被害状況等調査及びドローンを活用した被害防止対策については、専門家の指導・助言を受けて取り組む。
組 合 名 |
被害状況等調査 |
有害鳥獣繁殖抑制・駆除 |
被害防止対策 |
三面川鮭産漁協 |
○ |
○ |
- |
阿賀野川漁協 |
○ |
○ |
○ |
五十嵐川漁協 |
○ |
○ |
- |
刈谷田川漁協 |
○ |
- |
- |
魚沼漁協 |
○ |
- |
○ |
中魚沼漁協 |
- |
○ |
- |
③ 信濃川カワウ被害防止対策広域協議会
本協会は協議会の構成員として県、信濃川流域の関係漁協及び市、(一社)新潟県猟
友会と共にカワウによる被害防止に向けた取り組みを行う。
3 県内共通遊漁承認証発行事業
遊漁者の利便性を目的に漁業協同組合、釣具店等の協力とオンライン販売※によって「アユ・サクラマス・モクズガニを除く全魚種」と「コイ・フナ」の県内共通遊漁券を発行する。
また、今年度も遊漁者を対象に本県における内水面漁業制度と遊漁に関する情報提供を行うため『遊漁のしおり』を発行する。
なお、発行に伴う遊漁料金は発行経費等を差し引き、過去2か年間のアユ、サクラマス、モクズガニを除く放流実績に基づき各漁協に配分する。
※オンライン販売では「アユ・サクラマス・モクズガニを除く全魚種」の県内共通遊漁券を発行する。